生きている間に、ご自分が亡くなった後の相続する人たちが揉めないようにしておく方法はないものでしょうか。
あるいは特定の相続人に特定の財産を確実に渡す方法はないものでしょうか?
特定の相続人に安心して会社を継承させる方法はないものでしょうか?
相続のご相談を受けているとよくこのような質問を受けます。
上記のようなご要望に応える方法の一つに「生前贈与」という方法があります。
生前贈与とは文字通り、生きている間(生前)に特定の人に財産をあげて(贈与)しまうという方法です。
この方法ならば相続が発生しても、その特定の財産は既に贈与した相手のものになってしまっているので、その財産は相続財産には含まれません(※)。
※細かい「例外」があるのですが話が複雑になるので今回は省略します。
「生前贈与 良い方法だね!それでいこう!!」と思われたかもしれません。
しかし生前贈与にもデメリットがいくつかあります。
デメリットの最大が「贈与税がかかる」ということです。
贈与税は「一番高い税金」と言われているくらいの高率の税金です。
どれくらい高率かというと、たとえば2000万円を贈与する場合。
実に720万円が贈与税として「贈与された方=もらった人」が支払わなくてはなりません!!
累進課税(金額が増えるほど税率も上がる)なので、もっと高額な財産の贈与の場合は税率も税額もグン!と上がります。
「じゃー生前贈与なんて使えない!!」ですよね。
そこでその贈与税をうまく(もちろん非合法ではなく)回避できればいいわけですよね。
「相続時 精算課税 制度」というしくみがあります。
相続時精算課税制度とは
○65歳以上の親から20歳以上の子供に対し
(※平成26年2月現在。今後この条件は変更される予定です)
○生きている間に財産をプレゼントする行為=贈与に対して、
?2500万円まで「贈与税¥0」、
?2500万円以上の金額については一律20%の贈与税がかかるしくみです。
つまり2500万円以下の贈与なら贈与税額が「その時点では」無税で済みます。
2500万円超の贈与なら2500万円を超える部分に対して一律20%の贈与税を払います。
そして相続が発生した時にまとめて精算する、という制度です。
相続時精算課税制度という名前の通りですね。
相続発生時に相続財産が基礎控除以下で相続税がかからなかった場合は、贈与時に贈与税を払わなかったなら贈与税はゼロ円=無税で確定します。
贈与時に贈与税として払った場合、相続財産が基礎控除以下で相続税の対象にならなければ、払い過ぎた贈与税は還付されます。
この相続時精算課税制度・・・いろいろ使い方が考えられます。
たとえば会社の経営者が特定のお子さんに跡を継がせることを考えているケース。
この制度を使って死後の相続争いの回避を図ることができる場合があります。
まずこの制度を使って、跡を継がない相続人(予定者)に対し、生前に会社に関係のない財産を事前に贈与しておきます。
もちろん2500万円以下の財産なら贈与時は無税で移転できます。
その代わりその相続人(予定者)に裁判所に赴いてもらい「遺留分※を放棄」してもらっておきます。
※遺留分の説明は今回は省きます。
相続が発生した時に、たとえば跡継ぎさんに思い通りの相続をさせたとします。
その際に跡を継がなかった他の相続人(贈与を生前に受けた相続人)が「やっぱりもっと欲しい。遺留分の分だけの財産をくれ!」ということはできなくなります。
つまり、跡継ぎさんに安全に跡を継がせることができるというわけです。
跡継ぎ(事業承継)については改正される事業承継税制などについても解説しなくてはなりません。
ですが長くなりますので(もう十分長いですが)、別にコラムを書きたいと思います。
※畑秀樹行政書士事務所では江戸川区 葛飾区 の方の相続・遺言書作成のご相談をお受けしています。